強い会社を作る
塚越寛氏(伊那食品工業株式会社代表取締役会長)に学ぶビジネスを輝かせるためのヒント・・・
強い会社になるには社員のやる気を引き出すしかないと思った。
では、どうすればいいか。
よし、社員が自分の家庭のように感じる会社にしてやろう、と。
だって、たとえ会社ではダメ人間でも、うちに帰れば立派なお父さんをやっている人はたくさんいるでしょう。
金を稼いで、家庭を守り、子どもの面倒を見る。
家族を守ることに手を抜く人間はいない。
それは『家庭は自分のもの』と思っているからだ。
同じように会社を社員にとっての家庭にすればいいんだ。
これが一般の会社なら社員持ち株会を作って、株を分けたりする。
でも、それくらいのことじゃ、社員は会社を家庭とは感じない。
そこで私はまず経営情報を提供することにした。
うちでは幹部だけが知っている経営の数字なんてない。
製品をどれだけ売って、どれだけ儲かったかは社員なら誰でも知っている。
また、リストラはやったことはないし、これからもやらない。
給料も地元では高いほうだ。
社員旅行だって、39年も前から1年おきに海外へ出かけている。
そして、いったん何かあったら、私は完全に面倒を見るよ。
ある年のことだが、社員の自宅が火事で焼けた。
消防署から第一報が入ったとたん、私は陣頭指揮に立った。
『第一報はすぐに駆けつけろ。状況がわかったらオレに知らせるんだ。第二班は炊き出しの用意をしてから現場へ。そして、第三班は待機だ』
社員は火事の現場に駆けつけてきて、それぞれ衣類や家具をカンパした。
そして会社は被災した社員に建替え資金を貸し出した。
利息なんて取らない。
社員は家族なんだから、困った時は助け合うのが当たり前。
私は困っている社員がいたら面倒を見る。
そして、いったん約束したら絶対に守る。
(一流たちの修行時代/光文社新書)
塚越寛氏は日本一の寒天メ-カ-、伊那食品工業会長。
この会社が注目されているのは、堅実な利益体質もさることながら、塚越会長のユニ-クな経営方針・・・。
リストラはしない。
年功序列を守る。
上場は考えない。
地域や社会に貢献する。
本社敷地を整備して公園にし、一般に解放する・・・などなど。
このような取り組みは大企業の幹部も注目し、伊那食品社内見学が後をたたないとか・・・。
ところで、まだまだ一般的には社員に優しい会社より厳しい会社の方が多いと思いますが、これからの時代、このような会社は存続が難しくなっていくことでしょう。
私も今まで会社を完全私物化している社長を数多く見てきました。
そのような社長は「社員とはこき使うものである」ことが当たり前だと思っています。
出来るだけ少ない賃金で如何に働かせるか・・・、こんなことばかり考えています。
「社長の仕事は社員を幸せにすること」なんて言葉を聞いたら腰を抜かしてしまうことでしょう。
しかし、本当に強い会社を作っていきたいのであれば、社長はもちろんですが、社員もいきいきとしていなければなりません。
社員の元気、本気、やる気、勇気、根気を引き出す仕組がどれだけ整備されているか・・・、ここが大切なように思います。
私は社員のこれら“五気”を限りなく引き出してあげることの出来る施策を数多く保有している会社・・・、これを優しい会社というのだと思います。
起業したからには「日本で一番優しい会社」「日本で一番大切にされる会社」「社会にとってかけがえのない会社」「地域にとってカッコいい会社」こそ目指していきたいものです。
今日も最後まで読んでいただきありがとうございます。