起業は究極の遊び

すべての顧客&社員&取引企業が輝くことの出来る「日本で一番大切にされる会社」「社会にとってかけがえのない会社」「地域にとってカッコいい会社」を創造するためのヒント。 さらには、会社にとって、社会にとってかけがけのないビジネスパ-ソンになるためのヒントのおすそわけ!

超ハピネス企業、なぜ突然ブラック企業に転落・・・仕事の効率向上施策が業績悪化を招く理由

ビジネスジャ-ナルに学ぶビジネスを輝かせるためのヒント・・・

あなたは、こんな企業をどう思うだろうか。社員が休み時間もなく夜遅くまで働き、必要とあらば土日も出社し、残業代がすべて支給されるわけではない。経営理念を社員全員が覚え、社長が示す将来ビジョンに誰も文句を言わない。「間違いなくブラック企業だ」と思う読者も多いのではないだろうか。しかし、それは大きな間違いである。一方的な見方にすぎないのだ。

年中ガムシャラに働きながらも、社員の目がキラキラ光っている会社がある。労働量から見ればブラック企業に引けを取らないのに、社員はモチベ-ションが高く、企業に貢献することを惜しまない。「ブラック企業」という言葉がある一方、このように社員がイキイキと働く企業を表すワ-ドが見つからないのも不思議である。

今年の2月に発売され話題となっている書籍『実践 ワ-ク・ライフ・ハピネス2』(監修:藤原直哉 著者:阿部重利 榎本恵一/万来舎刊)では、社員が働くことを楽しんでいる企業を「ハピネスな会社」と定義している。筆者はこの定義が最も適していると考える。

筆者はこれまで多くの企業を取材してきたが、その中にはまさに「ハピネスな会社」があった一方、その真逆な「ブラックな会社」も多くあった。その違いはなんだったのか。事例を挙げながら述べてみたい。

  • 「ハピネスな会社」を体現するベンチャ-企業

ここで紹介するのは、某ベンチャ-企業である。2005年当時、社員80名だったこの企業は、上場も目指せるほど勢いよく業績が伸びていた。筆者が社員に取材したところ、誰からも同じような答えが返ってきた。「当社の社員は、みんな幸せです。会社の悪口を言う人を聞いたことがありません」

まさかそんな会社があるわけない、社員はそう言わされているだけだろう、と筆者は疑問に思い、しばらく会社を取材し続けたが、社員は本音を語っていることがわかった。まさに「ハピネスな会社」だったのだ。

この会社の特徴は、なんといってもカリスマ性のある創業社長にあった。社長は毎日のように未来の夢を語り、その言葉に社員全員が魅了されていた。社長自ら営業に動き、社内のどの営業マンよりも大型の契約を取り、大きな夢が実現することを証明していた。「そのうちに(大企業の)○○社と一緒に仕事をすることになる」などと大風呂敷を広げては、それを次々に実現していた。幹部社員も社長の夢を継承すべく、いつも部下に会社が目指す夢を語っていた。「日本から世界へ飛び出し、この分野で世界一の会社となる」という社長の夢に共感し、社員全員がその夢に向かってガムシャラに働いていたのだ。

社員の自主性を重んじ、提案する企画を歓迎して予算も与え、利益が出れば社員全員にフェアに分配した。社員のプライベ-トも充実させるために「日本一給料が高く、日本一休みの取れる会社」を目指し、それを実現しつつあった。年に一回の社員旅行にも全社員が参加し、社長とともに時間を過ごすことを楽しんでいた。社長が社員に愛され、社長も社員を愛していた。

  • 「ハピネスな会社」がブラック化する

しかし、わずか数年で、「ハピネスな会社」が「ブラックな会社」に転落することになる。社長が難病にかかり病気療養を理由に退任し、株主も変わった。株主から送られた新社長は辣腕経営コンサルタントだった。新社長は就任するなり全社員を集め、こう宣言した。「ビジネスは数字だ。数字こそ結果だ。前社長はいつも夢のようなことばかり言っていたようだが、私は数字の裏付けのないことは信じない。新しい経営手法を導入し、改革を行う」

経営コンサルタントの新社長から見たら、「なんと曖昧なことで動いている会社だろう」と感じたに違いない。新社長は業務管理やプロジェクト管理、営業管理に最新ITを使ったシステムを導入し、そのシステムによって個人の評価がポイント計算されるようにした。新社長はこれを「見える化革命」と呼んでいたが、社員からは数字による管理が始まったとしか思えなかった。新社長は夢を語ったり、大風呂敷を広げることもなかった。売り上げ目標を明確にし、それをどこまで達成したかを重要視し、社員には個別に目標数値を与えて叱咤激励していた。目標達成にほど遠い場合、「結果を出すのがプロだ。残業してでも達成しろ」とプレッシャ-を与え続けた。

「まったく別の会社になってしまった」と社員が嘆くようになり、優秀な社員から会社を辞め始めた。残った人は、「会社に魂を売った」と揶揄されるほどだった。目をキラキラさせていた社員はもういない。数字に追われて鬱病になる社員も出てくるようになった。中には過労で亡くなった人もいる。もはや、どこからどうみても「ブラックな会社」である。

今では全盛期の3分の1まで売り上げが落ち、社長もクビになり、会社はますます迷走している。夢に満ちた会社は、事実上もう消えてしまった。

(文=鈴木領一/ビジネス・コ-チ、ビジネス・プロデュ-サ-)

鈴木氏は「ハピネスな会社」に必要な要素を3つ挙げています。

1つ目は「社長が魅力あるビジョンを語り続ける」こと、2つ目は「社長自らビジョンを実現させてみせる」こと、3つ目は「社員の自主性を重んじ、自由度を広げる」というものです。

さらに、「ハピネスな会社」には、それを維持させているだけの優秀な社長の存在が必要不可欠であるとも言います。

私も全面的に共感することばかりなのですが、私は他にも会社のトップが「会社とは何か」、「社員とは何か」、「売上とは何か」、「利益とは何か」ということについて自分なりの定義を持っていることも大切なように思います。

さらには、「この世の中は競争社会である」と捉えている社長と、「この世の中は共創社会である」と捉えている社長とでは会社の未来が全く違うものになるでしょう。

「この世の中は競争社会である」と捉えていると、「勝つことこそ正義である」そして、「お金を稼ぐことの出来る人間こそ価値がある」という思考の社員を数多く生み出すことになります。

その結果、人と人とのつながりが希薄となり、社風が乱れ、また、社会が荒んでいきます。

会社のトップというのは自社に対してだけ責任があるのではなく、社会に対しても多大な責任を負っている存在です。

私は起業したからには、「起業から喜業へ、そして輝業へ」と移行させていくことが必要であると考えています。

せっかくの人生、周囲の人間にどんなに「無理だ」と言われようとも大いなる「理想の会社」こそ目指していきたいものです。

今日も最後まで読んでいただきありがとうございます。