高倉健さんの「粋」は、どこから来るのか
ビ-トたけし氏に学ぶビジネスを輝かせるためのヒント・・・
俺なりに言うと、「粋」っていうのは「常識をわきまえた上での、もうひとつ上の生き方」なの。
それにはまたいろんな意味があるんだけども、まずは他人に気を使えることが大事になってくるんじゃないかと思ってる。
気遣いができる人って、すごくかっこいいじゃない。
それで真っ先に思うのは、高倉健さんだね。
健さんのかっこよさは、その気遣いのすごさにあると思う。
俺は初めて高倉健さんに会った時、感動したもん。
もう二十年以上前だよ、『夜叉』って映画で共演することになって、ロケで福井に向かったんだ。
そしたら健さんが福井の駅のホ-ムで待っててくれたの。
雪の中、花束を抱えてね。
「たけしさんですか。高倉健です。私の映画に出てくださって、ありがとうございます。よろしくお願いします」
電車から降りたらそう言われてさ、花もらっちゃって。
ああ、今のは高倉健だ、どうしよう、参ったなと思った。
あと渡哲也さんもかっこよかったな。
もうだいぶ前のことで、ラグビ-の松尾雄治と銀座のクラブに飲みに行った。
松尾は明治大学の後輩にあたるから、俺のことを「先輩、先輩」って呼ぶんだ。
それで松尾の誕生日に「先輩、一杯おごってよ」とか言われたわけ。
クラブに入ったら奥のほうに渡さんがいたんで、俺は挨拶したのね。
「どうも、たけしです」
「あれ、たけしさん、今日は何?」
「いやちょっと松尾雄治の誕生日で、おごらなきゃいけないんですよ」
「たいへんですね」
てな感じでお互いに挨拶して、あとはそれぞれ飲んでいたんだけども、そのうち渡さんたちが先に帰ることになった。
「たけしさん、お先に」
「どうも」って会釈して、また俺たちはワ-ワ-言って飲みはじめたの。
それでさんざん飲んでたら、突然俺たちの席に花束が届いたんだ。
見たらカ-ドがついていて、「松尾雄治様 お誕生日おめでとうございます 渡哲也より」って書いてある。
ビックリしちゃってさ。
それでもっとビックリしたのはお勘定の時。
俺たちも帰ろうかということで、お勘定お願いしますって店の人に言ったら、もう終わってるの。
「渡様がおすませになっています。お誕生日ですから、と」ああ、すげえなあと思って。
俺が松尾におごるはずが、渡さんに全部おごられちゃった。
おごってくれたからすごい人だって言うんじゃないよ。
誕生日を祝ってくれる気の使い方がすごいんだよ。
(下世話の作法/祥伝社)
粋な人とは他人に細やかな気を使える人、そして気を使える人とは、どうしたら喜んでもらえるかという真心を常に持っている人。
たけしさんは著書の中でこんなエピソ-ドも紹介しています。
『師匠(故深見千三郎氏)と浅草の寿司屋へ行って、お勘定の段になったら師匠が俺に財布を渡す。
その時小声で「チップ、一人一万ずつな」と言って、自分だけ先に店を出る。
直接チップをあげたくない。
「まあいいから、とっといて」なんて絶対に言いたくない。
姿を消すから粋であり、気遣いの押し売りをしないから粋なんだ。
チップを払う持ち合わせがないから食いに行かない、なんてこともよくあった。
「寿司代はあるけどよ、あげる小遣いがないんだよ。だから今日は行かねぇ」って、かっこいいんだ』・・・。
高倉健さんも渡哲也さんも人には大いに気を使うがさりげない・・・、そんな粋な大人だったからこそ、亡くなられた今でもその人柄が語り継がれているのだろう。
粋な大人は本当にかっこいい。
「下品」な大人ではなく、「粋」な大人こそ目指していきたいものです。
今日も最後まで読んでいただきありがとうございます。