ビリや欠点を大事にする
養老孟司氏(東京大学名誉教授)に学ぶビジネスを輝かせるためのヒント・・・
会社のような組織では、「何であの人が会社員をやっていられるのだろう」「あんな仕事なくてもいいのではないか」と思うことがあるでしょう。
そういう理不尽があると、一生懸命働いている人はイライラします。
しかし組織、システムというものは複雑で、「どう見ても要らない」という部分を抜いたら、思いのほか大きな影響が出ることもあります。
もちろんそのことで組織が崩壊するということはないでしょう。
全然働かない人をクビにしただけで会社が潰れるなんてことはありえません。
ちょっといじったくらいでは大崩れしない。
その性質をシステムの安定性といいます。
小さな部分をいじってもシステムの機能そのものはほとんど変わらないわけです。
たとえば何十本も足をもっているヤスデの足を一本抜いても、ヤスデは歩けなくなるわけではありません、その意味では安定しています。
ところが細かく見ると変化が出てきます。
実はたった一本抜いただけで、残りの足全部の動きは変わるのです。
つまり会社でいえば、不要だと思っている人を一人抜いても、会社はつぶれません。
しかし残りの皆の仕事が変わってくるということはありえるのです。
「あの人がいないほうが給料の分配が増えるはず」と思っていても、そう単純に事は進まないのです。
いまある組織、会社はその「いないほうがいい」人も含めてここにあるからです。
大学でそういうことを感じたことがありました。
いちばん出来の悪い人がいなくなったらどうなるか。
単に二番目に出来の悪い人が一番出来の悪い人に繰り上がるだけです。
いやこれは下がるというべきか。
ともかく出来の悪い人の存在は必要なのです。
だから昔の小学校はビリを認めていたのです。
ビリはビリであることが少なくとも役割になっていた。
皆が平等というのはいいことばかりではありません。
(養老訓/新潮社)
養老孟司氏は言います。
『「あの人は酒さえ飲まなければいい人なのだけど」と言われる人がいます。
この人が「お酒を飲んでいない状態でいい人」なのはもしかするとお酒を飲んでいる状態があるからこそ、とも考えられるのです。
お酒を飲むと性質(たち)が悪いからといって、完全に禁酒させた場合、「いい人」のままかどうかはわかりません。
バランスが崩れることもあります』と・・・。
一見部分だけを見ると調和が取れていないと思えるようなことであっても、全体から見ると調和が取れている、つじつまが合っているというようなことがあります。
会社の組織などで使えないと言われている社員、または売上の上がらない営業パ-ソン・・・、このような人たちは一般的には不必要な存在であると捉えられがちですが、本当にいらない存在なのか・・・。
もしかしたらこのような人たちほど、いざという時には会社の未来を救う存在になるのかもしれません。
「天と地の間にはお前の哲学では思いも寄らない出来事がまだまだあるのだよ」とはシェイクスピア・・・。
見える部分だけではなく見えない部分・・・、物事の本質を洞察する眼力こそ、磨き上げていきたいものです。
今日も最後まで読んでいただきありがとうございます。