「ホスピタリティの教科書」に載せたくなる話
志賀内泰弘氏(経営コンサルタント)に学ぶビジネスを輝かせるためのヒント・・・
レクサス星が丘店には、アソシエイトと呼ばれる15名の女性がいる。
来店客の受付対応・おもてなしから、電話やメ-ルなどのあらゆる接客を担当している。
開設準備の時から指揮を執ってきた専務取締役の山口さんは、こんな話を聞かせてくれた。
ある日、山口さんが、すでにレクサスを購入されているオ-ナ-ご夫婦とラウンジで向かい合って話をしていた時のことだった。
アソシエイトの一人が、スッと近づいてきたかと思うと奥様の脇により、何かを手渡すのが見えた。
奥様は、最初、「えっ!?」という表情をされたが、すぐにハッとした様子でアソシエイトに小さくお辞儀をした。
(おや、何だろう)と山口さんが不思議に思っていると、奥様は、「ちょっと失礼します」と言い、化粧室へ行かれた。
そして、しばらくすると、何事もなかったかのように席に戻られた。
そのことが気になって仕方がなく、お帰りになられた後、そのアソシエイトに「何か渡したよね」と尋ねた。
すると・・・。
ご夫婦のお客様にコ-ヒ-をお出しした時、奥様の右足のストッキングが電線していることに気づいたのだという。
女性にとって、電線は大敵だ。
しかも、所かまわずやってくる。
アソシエイトという仕事柄、自分でも予備をバッグに持っていた。
しかし、奥様の履かれているストッキングとは色が異なる。
自分は担当をしているので、席のそばを離れることができない。
そこで、インカムを使って、仲間のアソシエイトに指示をして、すぐ2軒隣の三越百貨店で同じ色のストッキングを買ってこさせた。
「ダッシュでね!」と。
そのストッキングを仲間から受け取ると、周りの誰にも悟られぬように「私の持っていた予備でよければお使いください」と、テ-ブルの下でこっそりと手渡したのだという。
隣のご主人はかまわないとして、目の前には接客をしている山口さんとセ-ルスの担当者がいる。
二人とも男性だ。
他にも来店客に見られるかもしれない。
だから、その場の「誰にも気づかれぬよう」「お客様の心に負担にならないよう」に、「素早く」対応することが必要だと判断したのだという。
女性ならではの心憎い気遣いだ。
相手の立場に立って考えているからこそできること。
これこそホスピタリティのお手本として教科書に載せたくなるようなエピソ-ドである。
(No.1トヨタのおもてなしレクサス星が丘の奇跡/PHP)
「おもてなし力」を磨くことが出来て、また、お金もいただける・・・、そんな最高の職業がセ-ルスと言えるのかもしれません。
ところで、おもてなし力は、どうしたら喜んでもらえるか、どうしたら感謝の気持ちを形に表すことが出来るかということを常日頃から考え続けていくことによって養われていくように思います。
今現在、お客様がどのような問題を抱えているのか、またはどのような痛みを抱えているのかと洞察する癖を、さらには、こんなのあったらいいなを発見する癖をつけていくことが大切ですが、やはりそれよりも何より大切なことは様々な体験をすること、そして苦労をすること、さらにはより多くの失敗をすることでしょう。
様々な体験、苦労、失敗をすることによって、人の気持ちが否応なしにも分かるようになります。
これが、お客様をおもてなしする上で良い土台となるのです。
お客様の気持ちを完全に理解することは不可能かもしれませんが、様々な痛み、苦しみ、世の中の不条理を知ることによって、お客様の心に最大限寄り添えることが出来るようになります。
また、お客様が心の中に思っているのだけれども、言葉に表すことが出来ないことを言語化して差し上げる能力も磨かれることになります。
相手の立場にとことん寄り添う姿勢・・・、大切にしていきたいものです。
今日も最後まで読んでいただきありがとうございます。