ひとつのものを深める方法
岡本浩一氏(社会心理学者)に学ぶビジネスを輝かせるためのヒント・・・
ひとつのものを深めるには、なにかひとつのものを決めて、それを精密に学ぶということをやってみる。
精密トレ-ニングのひとつの手段として、深い模倣をすることが有効である。
文章に上達する方法として、昔から写文が有効だと言われる。
夏目漱石を学ぼうと思えば、万年筆で原稿用紙に「草枕」の冒頭などを書き写してみるのである。
書く速度でゆっくりと文を味わってみると、読んでいたときには気づかないいろいろな文章上の苦心に気づく。
わずか三十分書写してみただけで、目から鱗が落ちる思いをするはずである。
たくさん書写すると、ああ、ここで漱石は一度休みをとったな、とか、ここで日が改まったのではないかなどということがおぼろげながら想像できるようになる。
そしてその想像がだんだんはっきりしてくる頃、漱石の思考のリズムとでもいうべきものが身についてくるのである。
不思議なことに、同じものを書写した人どうしがこういう話をすると、ここで休みをとったと想像する箇所がずいぶん類似しているものなのである。
時間がなければ、ワ-プロで写してもよいと思う。
あるいは、声に出して読んでも、黙読するのとは全然違うという人が多い。
とにかく、ある程度時間をかけて、ひとつの作品、ひとりの作者とじっくり取り組んでみるのである。
ピアノ曲を練習する場合も、ある特定の曲のある特定の演奏家による演奏のCDなどを用いて、極力それを模倣してみる。
ここは、自分ならこんなふうには弾かない、という箇所があっても、それはそれとして、模倣に徹してみる。
微細なところも一度はそっくりに演奏できるまで粘って工夫してみる。
そうすると、模倣に苦労することがある。
その苦労を乗り越えようとしていると、それまでには見えていなかった指使いや、ちょっとした技法など、その人が独自に工夫しているものに突然気づくことがある。
あるいは、自分の解釈と合わない演奏でも、模倣しているうちに、自分とは異なる視点の一貫性が、突然、それこそ目から鱗が落ちたように、見えてくることが多い。
その過程で、いくつもの疑問が解けたり、洞察があったりする。
(上達の法則/PHP新書)
何事においてもそうだと思いますが、初心者と上級者ではものを見る深さがまるで違います。
ものを見る深さとは思考の深さとも言えると思いますが、上級者を目指すのであれば、まずは思考には深さ、レベルがあるということを知らなければならないでしょう。
そして、その深さの世界の一端を垣間見るために精密トレ-ニングが有効なのだと思います。
文章でも楽器でもそうですが、まずは自分が気に入った一人の人を徹底的に研究してみる・・・。
その人の癖までも模倣してみる・・・。
そうすると、私も楽器を演奏しますからわかるのですが、様々な視点を得ることが出来るように思います。
思考の深さとは視点の数でもあります。
視点の数が増えれば増えるほど、つまり思考が深くなればなるほど、人生をより一層楽しむことが出来ます。
常に深さを意識し、探求していきたいものです。
今日も最後まで読んでいただきありがとうございます。