入院した社員に3年半給料を払い続けた会社
坂本光司氏(人を大切にする経営学会会長)に学ぶビジネスを輝かせるためのヒント・・・
あなたがガンにかかったとします。
働き盛りのあなたには、妻も子供も、もしかしたら年老いた両親もいるかもしれませんが、長期の入院生活を余儀なくされます。
闘病生活は長く、会社に行くことも仕事をすることもできません。
自分の体のことはもとより、気にかかるのは家族の生活です。
そんな状態が3年半も続いたとしたら・・・。
その3年半のあいだ、毎月の給料はもちろん、ボ-ナスまで全額支給した、という会社が樹研工業です。
結局、闘病していた社員の方は亡くなってしまったそうですが、それまで毎月、給料日には本人のもとに直接、給料が届けられたそうです。
この樹研工業に社員が入ると、全員が入社と同時に1000万円の生命保険に加入するそうです。
掛け金は全額会社負担、しかし社員に万が一のことがあったときは、生命保険の全額をその社員の家族が受け取るのです。
「大切な人を病で失ったご家族に対して、会社ができることは、残った人たちの生活を支えてあげることくらいしかできません。
社葬で大きな葬式をあげても、残った人たちのあとの生活を考えると、それは違うのではないかと考えて、私はこうしました」
そう語る松浦元男社長が経営する樹研工業は、まさに社員とその家族の生活のより所のような会社です。
(日本でいちばん大切にしたい会社 2/あさ出版)
この書籍の中では、先程以外にも樹研工業の様々なユニ-クな取り組みが紹介されています。
例えば、社員の採用は先着順、中卒だろうが、中途採用であろうが、日本人であろうが、外国人であろうが、男だろうが、女だろうが、いっさい問題にせず、早い者順であるということ。
さらには、出勤簿もタイムレコ-ダ-も、報告書もなし、出張時は誰でもグリ-ン車使用。
まだ他にも、給料が年功序列ではなく、年齢序列であり、定年もなし・・・。
そして、入社式での松浦社長のスピ-チも心に響きます。
「もし会社に遅れそうになっても、あわてて来るな。
遅れたら、こっそり裏から入ってくればいい。
トイレに行ったような振りをして入ってくればいいんだ。
時間なんか追うことはない。
無理して急いで危ない目にあうことはない。
わが社にとっては、きみらの命のほうが大切なんだから・・・」と。
このような会社ですから、「私が辞めたら子供を入れてくれ」と社員の世襲制が始まっているようなのです。
著者の坂本光司氏は、本当の企業経営とは「5人に対する使命と責任を果たすための活動のこと」と定義し、その5人として次のような人たちを挙げています。
一、社員とその家族
二、社外社員(下請・協力会社の社員)とその家族
三、現在顧客と未来顧客
四、地域住民、とりわけ障害者や高齢者
五、株主
企業を運営していくためには業績向上はもちろん大切なことですが、その秘訣は社員歓喜であり、社員家族感動・・・。
すべてはここから始まるといっても過言ではないように思います。
どうしたら社員の人たちに喜んでもらえるか、どうしたら社員の人たちに“こんな会社で働きたい”と思ってもらえるかを考え尽すこと・・・。
社員とその家族を歓喜、感動させることによって、会社の業績が上がり、それはやがて地域を、国家を輝かせることに繋がっていく・・・。
まさにこれこそ王道の経営でありましょう。
今改めて一人ひとりが、会社とは何なのか、誰のためのものでなければならないのか、そして、どう変化していかなければならないのか・・・、こういったことを考えていかなければならない時期に来ているように思います。
今日も最後まで読んでいただきありがとうございます。